ゴムのような感触の柔軟な素材「フレキシブルフィラメント」FilaFlexをノズルを詰まらせながら試行錯誤してやっと綺麗に出力出来るようになったので情報を共有します。
(例)出力品の歯付きベルト
歯付きベルトって自作ではなかなか作れないんですよね。けどゴムライクなフィラメントで作ったら任意のサイズの切れ目無しの綺麗な歯付きベルトが作れてしまいます。
FilaFlexはPLAを基礎にした柔軟性のあるフィラメントで温度230℃程度から出力することが出来ます。
PLAと同じような感覚で扱うとフィラメント自体の柔軟性で送り出し機に絡まってしまったりとハプリングが続出するなかなか難儀な軟(難)素材です。
僕は何度か試してみて何度も何度も「なんなん!?もう(怒)!」ってその難儀な設定っぷりに柔軟な発想も浮かばず諦めモードでしばらく放置してしまいました。
Q.いま「なん」って何回読んだでしょう?(笑)
失敗談
まず、一番最初にFilaFlexを手に入れて推奨の最低温度230℃まで上げて手でフィラメントを押し出した時はうまくいっていました。
「うん。これは簡単!」といきなりプリントをしたのですが・・・これがもうダメダメで・・・出ない!
とにかくノズルからフィラメントが出ないのです。
温度不足?と思い温度を235℃まで上げると最初はにゅるにゅると出て来るので「あー、やっぱり温度不良か」と思っていたのですが、しばらくプリントしているとまた詰まります。
「おや?」今度は240℃でトライするとまた出て来ます。が、また途中で詰まる。を繰り返し
235℃ー240℃ー245℃ー250℃ー255℃とドンドン温度を上げて行きました。
最終的に「こんなことしていたらそのうち機械が壊れてしまう!」と気が付き、ノズルを分解すると完全に炭化したフィラメントががっちりノズルに詰まっていました。
いろいろ試しているうちにわかったのですが、240℃程度で”焦げ”が出力品に混じって少し出て来ます。きちんと出力さえされていれば推奨上限の260℃でも問題ないのでしょうが詰まってフィラメントがノズル内部に溜まった場合は炭化してしまうようです。加えて行き場を失ったフィラメントが押し出し機に絡まってエライ参事になることが予想されます。
完全に炭化したフィラメントがたっぷり詰まっていたのでドリルで削り出して再度使用してみたら、やはりすぐ詰まって出て来ない・・・
仕方ないので新品のノズルに取り替えると
おお!今度はうまくいった!
所々抜けがあるものの、とりあえず出力は最後まで成功です!わーい!
ところが、
もう一本作ろうとプリントさせると・・・またまた詰まり発生!むむむむむ。。。
ノズルを分解したら上の方で固まりを発見
それを取り除くとうまくプリント出来る。で、また詰まる。を繰り返し・・・
このままじゃ大物の造形は無理!
どうやったらうまくこの難素材を出力できるのか?と検索するとどうやら専用ホットエンドとやらが出ているようです。
専用品は何が違うのか?と見てみると、どうやらバレル内部にチューブが入っている様子。
こちらの方のブログでも自社でバレル内にテフロンチューブを入れることでスムーズに出力出来るようになったとあるのでヒントはどうやらバレルにあるようです。
引き抜いたフィラメントの端をじっくり観察することに
なるほど!どうやらブログの通りに軟らかくなったフィラメントがバレルで詰まっていると推測することができます。
では3Dプリンターの理想的なノズルの状態を図解してみます。
ヒートブロックで熱せられたノズルから熱せられたフィラメントが糸状に出て、上部のバレル(ヒートシンク付き)ではフィラメントが熱で軟らかくならないように冷却されています。
ある程度軟らかくなったフィラメントがヒーターの熱で溶けたフィラメントを押し出します。
今回の問題は、フィラメント自体が軟らかいということ。
バレル、ノズルからフィラメントを除去して1発目の出力では徐々にフィラメントが熱せられて理想の状態で出力出来ていたものと思われます。そして充分に過熱されたフィラメントは徐々に上の方まで溶けて冷却効果のある一定の箇所で留まり安定します。
その状態で、一度冷却されると上部に固まりが出来ます。
2発目の出力時には、固まったフィラメントが充分に過熱されていない状態のままま送り出そうとします。
硬いフィラメントの場合は一度だけ無理矢理押し出し機の力で押し込めば後はヒーターに近づいて溶け、問題無く出力されます。
しかしフィラメントが軟らかいので押し出し機の力を伝えることが出来ず、バレル内で曲がり、余計に上からの押す力がなくなります。
最初の失敗は温度を上げたこと
温度を上げると一度は出力出来るようになるのは、固まったフィラメントの部分まで熱が届くようになったから押し出し機の圧で押し出せていたというだけ。
冷却&過熱を繰り返す度にどんどん溶けたフィラメントの位置が上部に移動します。
この状態でさらにさらに温度をあげていくとフィラメントが焦げて今度はノズル先端で詰まってしまいます。
専用バレルは内部にテフロンチューブが入れてあり、このチューブの滑り効果で硬くなったフィラメントが下に押し出されやすくなっています。
加えて穴の径が細くなることでフィラメントが曲がりにくくなり、上からの圧力をしっかりと伝える事で安定した出力を保てる。
というようです。
でもバレルの改造は素人では無理!
どうにかして素人でもテフロンチューブのような効果を発揮できないものだろうか?と考えたのですが、
薄ーい膜で耐熱性でツルツル滑るチューブ状ものって・・・なかなか無いんです。
辺りを見渡してみると、ふとシリコンスプレーが目に止まりました。
そっか!別にチューブ状じゃなくても塗膜を作れればいいんだ!
「耐熱 潤滑スプレー」
で検索をすると、なんと普段使っているシリコンスプレーの名が挙がりました。
バイクのマフラーをシリコンスプレーで磨くとピカピカになるし耐熱性だしオススメという記事を参考にバイクのマフラー温度を調べてみると200℃、エキパイ付近だと300℃にもなるという情報を入手。
これなら230℃でも大丈夫なんじゃ?
ということで、シリコンスプレーをバレルに注入!
※事故防止のため、ヒーターは冷めてからスプレーしましょう。
これ、なかなかいいです。
バレル内部にシリコン膜を作ってくれるようで見事に2度、3度の連続出力にも耐えてくれました。
うまく固まったフィラメントがバレル内部で滑ってくれているようです。
シリコンのフィラメントに与える影響は今の所わかりませんが出力品の表面を見ても最初のものとは雲泥の差!抜けがありません。
最後に少し大物で7.5時間連続稼動させてみましたが大丈夫でした。
【追記】どこまで耐えられるのかと大物(7.5時間)を再度出力させると最後の方にコゲらしきものが発見されたので(ここまで1回目のスプレーから連続約16時間稼動)ノズル分解してバレルと今度はノズルにもシリコンスプレーしました所、今までで1番綺麗な造形が出来ました。この結果を参考に約10時間稼動毎にスプレーすることを目安としました。
フレキシブルフィラメントをうまく出力するポイントは
- 温度を上げすぎない
- ノズルは0.4mm程度
- 速度を遅く
- 積層を厚く
- 引き戻さない
- シリコンスプレーを利用する←追加
P.S.
ふと思ったのですが、もしかしたらPLAフィラメントにサラダ油を塗るとスムーズに出力できるというのも同じようにバレルの中で潤滑油の働きをしているということなのかもしれません。(違ってたらスミマセン)
2018/10/10追記、最近ではテフロンチューブ内蔵のバレルが安く出回っているようで、結局のところバレルの交換が一番効果的です!↓