前回、偏心軸0.5mmのサイクロ減速機を作ってみました。
しかし回ることは回るけれど、非力なモーターでは回しにくいものでした。
そのままのモーターを使おうとすると一段目にさらに減速機が必要そうです。
ただ一段目に減速機を取り組んでしまうとサイズや軸が大幅に変わってしまいます。
軸を変えずに減速するには遊星歯車減速機を使うことが思いつきますが、サイクロ減速機の前段に遊星歯車減速機を入れるとすると、「じゃあ全部遊星歯車減速機で構成した方が簡単で良くない?」ということになります。
せっかくサイクロ減速機を作ったんだから何か方法は無いか?と調べてみますと、ナブテスコが出している「RV減速機」というものが目に留まりました。
「一段目に遊星歯車減速機を使ったサイクロ減速機」です。
<ナブテスコ社 HP>
百聞は一見に敷かずと言いますので↓
しかし、僕はこの動画を見ても当初よく解らなかったのです。
遊星歯車が回るタイミングと同じタイミングで出力されているから、「じゃあ遊星歯車減速機でいいんじゃないの?どういうこと?」と謎でした。
見よう見まねでモデルを作り出してからようやく動きを理解することが出来ました。
解りにくかったのでRV減速機の構造の理解を以下に纏めました。
RV減速機の理解
まず、遊星歯車減速機は外歯車に遊星歯車を押し当てて減速しています。
<遊星歯車減速機>
サイクロ減速機も外歯車に内歯車を押し当てて減速しています。
<サイクロ減速機>
上の2つの減速機の動きをしっかり頭に入れておきます。
遊星歯車減速機は、遊星歯車を太陽歯車と丁度噛み合う位置に配置して固定することで全部の遊星歯車が歩調を合わせて回転することになります。
この「遊星歯車は全て同じ位置に固定されているもの」ということが以降の理解で大事になります。
サイクロ減速機は、内歯車が回転ではなくスライドすることで外歯車の影響を受け、結果として回転します。
遊星歯車が回転する軸を偏心させて、且つ偏心するタイミングを全て同じ向きに揃えてサイクロ減速機の内歯車に取り付けると、サイクロ減速機の内歯車は遊星歯車の偏心に合わせてスライド運動をすることになります。
遊星歯車は複数枚あっても、偏心軸を同調させることにより、同じタイミングで回転すると同じように偏心するので結果として同じ場所に位置する。ということになります。
遊星歯車で偏心させると、サイクロ減速機の一軸のみの偏心ではなく複数の偏心軸が同時に内歯車をスライドさせるので、力が複数の軸で分散された状態で内歯車を外歯車に押し付けます。
結果、一つの偏心軸へ対するの負担が軽くなるのです。ベアリングを用いない構造の場合、これはかなりの利点となるでしょう。
RV減速機は遊星歯車の公転運動をサイクロ減速機の入力として扱うのではなく、遊星歯車の自転をサイクロ減速機の入力として扱う事で動作しています。
遊星歯車の公転運動はサイクロ減速機の出力と同調しますので、RV減速機は遊星歯車減速機の外歯車がありません。
以上です。
作成の注意点
遊星歯車の偏心のタイミングをモデリングの時点でしっかり合わせて、組立時に解りやすいようにマークしておく必要があります。
遊星歯車の回転タイミングが合わないと太陽歯車と遊星歯車がうまく噛み合わないだけでなく内歯車のスライド運動が出来ません。
実際に作って動かしてみたものの動画がコチラ↓
この減速機の構造上組み立てながら動かすという方法が出来なかった(組立中に固定出来ない)ため、動かした後に分解して説明という型になっています。
初回のサイクロ減速機の実験動画よりかなり実用的な構造になってきましたが、今の所狙っているようなトルクは出せていません。
この辺が3Dプリンターで作る構造の限界といった所だと僕は感じました。
今後はさらに実用的な最初からトルクのあるモーターに変更して今までの実験を元に新しい構造で造型していこうと思います。